犬の潜在精巣

今回はわんちゃんの男の子に時々みられる潜在精巣についてお話します。

去勢をしていない男の子は、精巣の位置を確認してみてください。

精巣が2つ触れれば問題はないですが、1つしか触らない、あるいは一つも触らない場合には潜在精巣が疑われます。

◎潜在精巣(陰睾)

これは精巣(たま)が陰嚢(ふくろ)に入っていない状態をいいます。

正確には、精巣は生後まもなくしてお腹の中から鼠径管(そけいかん)を通り、陰嚢に収まります。

しかし遺伝的な影響などで陰嚢内に降りてこない精巣を潜在精巣または陰睾といいます。

◎潜在精巣は精巣腫瘍になりやすい

潜在精巣は正常(外に出てぶら下がっている)と比較して、常に体温により温められた高温状態にあり、腫瘍化しやすいといわれています。

陰嚢内に収まった精巣に比べ、皮膚の下やお腹の中に残ってしまった精巣の腫瘍発生率はそれぞれ約5倍、10倍に高くなっています。

特にお腹の中では、精巣の形や大きさが外見からはまったく分からないため、腫瘍が進行して巨大になるまで見つからないこともあります。

◎潜在精巣は遺伝する

潜在精巣は遺伝するものであることがわかっています。

ですから繁殖には使わないで下さい。 繁殖することで、遺伝情報が子供たち受け継がれてしまいます。子孫が潜在精巣になり、気づかれずに腫瘍になっていては大変です。

潜在精巣は、去勢手術時に外科的に摘出します。

腫瘍化しているかどうかは、見た目ではわかりません。

大きさや硬さで疑うことはできますが、病理検査に出す必要があります。

病気について

脾臓の腫瘤

脾臓の腫瘤の『2/3』は悪性腫瘍だと9/23の健康診断のところで話しました。

その後のおはなしです。

飼い主さんと手術をした場合のメリット・デメリット、手術を行わなかった場合のメリット・デメリットなどよくお話をしてから決断されました。

結果、手術で脾臓を摘出することになりました。

脾臓は血液に富んでいます。

そのため脾臓のできものは脆くて壊れやすく、『良性のできもの』でも裂けてお腹の中で大出血し、結果的に命を奪うこともあります。

脾臓の悪性腫瘍には、血管肉腫というものが多いのですが,とても極悪で転移も早く、嫌なガンです。

どちらの場合でも摘出しておくことは、良いことが多いです。

今回の子の病理検査の結果は『良性のできもの』でした。

一安心です。

病気について

避妊手術

8/31に犬の子宮蓄膿症と乳腺腫瘍のタイトルで避妊手術のメリットをお話しましたが 

先日、うちの手鞠も生後6ヶ月を過ぎましたので避妊手術をうけました。

術後はさすがにおとなしくしていましたが、翌日にはボールを持ってきて投げろ、投げろと元気にしていました。

ゴールデンレトリバーは関節疾患が多いので、過栄養にならないように細めに育ててきました。

避妊後にはホルモンバランスの変化で太りやすくなるというデメリットがあります。そのため今年の8月に出たばかりの避妊した子用のフードを食べて肥満のリスクとホルモンバランスに配慮しています。

あと麻酔がかかっているついでに手鞠にはライフチップバイオサーモを挿入してあげました。 これで安心です。

手鞠がつけているものは、浮き輪ではなく傷をなめられないようにするものです。

サイズは少し大きすぎなのですが、本人には問題ないようです。

病気について

犬の歯石

今回はワンちゃんの歯石についてお話します。

8月15日に『歯周病を防ぐ』でお話しましたが、歯磨きをしないと歯垢がたまり歯石になります。歯石がドンドンたまると下の子のような事になってしまいます。この子は口からかなりの量の出血があり来院しました。歯の根っこに膿をもつ事もあります。痛みも強く、食欲も無くなってしまいます。もちろん口臭もすごいです。

結局、この子は歯をあまり残してあげることができませんでした。それでも悪い歯が無くなった事で、以前より元気になったとのことです。

みなさん、歯を磨いてあげましょう。

茶色のかたまりはすべて歯石です。

病気について

犬の子宮蓄膿症と乳腺腫瘍2

◆乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は雌犬の全腫瘍の約50%といわれるほどかかりやすい病気です。 猫の乳腺腫瘍の85%が乳がんといわれるのに対して、犬の場合、「良性」と「悪性」の比率は50%ずつであります。さらに、その「悪性腫瘍」のうち半分があちこちに転移をおこし、その半分は非常にゆっくり転移するものといわれています。ということは、ものすごく極悪のものは25%の乳腺腫瘍になります。

研究報告によれば、初発情前に避妊手術を受けた雌犬が乳腺腫瘍になる確率は、避妊手術を受けていない雌犬の約0、05%。また、初発情と二回目の発情のあいだに避妊手術を受けた場合は約8%。発情二回目と三回目のあいだに避妊手術を受けた場合は約26%となっています。簡単に言えば、小さいうちに避妊手術をしたほうが乳腺腫瘍になりにくいという報告です。

治療

腫瘍の治療には、腫瘍組織の外科的な切除手術のほか、放射線治療、抗がん剤治療、免疫療法などいくつかあります。腫瘍の種類や発現部位、転移の状況などによって、適切な手段を組み合わせて実施していくことになります。

ご自宅では

週に一度は、女の子の場合はワンちゃんの腋の下から内股まで、ていねいになでてあげて小さなシコリができていないかどうか、チェックしてあげてください。たとえ悪性の乳腺腫瘍でも早期発見・早期治療ができれば根治する確率は非常に高くなります。

早期発見・早期治療が、がん治療には重要です。

拡張した子宮によりお腹がパンパンです。乳腺腫瘍が左の第3乳頭から第5乳頭までと右の第5乳頭付近にできています。かなり大きくなっていますので、切除範囲も広がります。術前検査では転移が認められませんでした。乳腺腫瘍は全身状態を考慮して腫瘍周囲を摘出しました。病理検査の結果でまた今後の治療方針を決定します。

病気について

犬の子宮蓄膿症と乳腺腫瘍1

先日、子宮蓄膿症と乳腺腫瘍の摘出手術をおこないました。今日は避妊していない女の子に多いこの2つの病気についてお話します。

◆子宮蓄膿症

中高齢期の雌犬に多くみられます。この病気は、子宮内に侵入した大腸菌などのバイ菌によってひきおこされる病気です。子宮内は体の免疫のおかげでバイ菌はいない状態ですが、体の免疫力と性周期のバランスが悪いと子宮の内膜が炎症をおこし(子宮内膜炎)、さらに化膿がひどくなり、膿がたまっていく(子宮蓄膿症)になります。大腸菌などが出すたくさんの毒素が体内にまわって、腹膜炎や腎炎、肺水腫、さらに腎不全など多臓器不全で命を奪われることになります。

症状

・元気食欲がなくなる。

・熱がある。

・水をいっぱいのみ、おしっこをいっぱいするようになる。

・陰部からおりものが出ている。

・下腹部が張っている。

治療

子宮蓄膿症になれば、体内に毒素がまわらないうちに、できるだけ早く外科手術で子宮と卵巣を摘出するのがもっとも確かな治療法です。  

今回手術した子は12歳の小型のワンちゃんです。

術前の体重は5.3kgでした。そしてこの摘出した卵巣と子宮は2.1kgもありました。なんと体重の約半分が、ウミで膨れた子宮であったことは驚きですね。この子は陰部からおりものとして外へ出てこなかったので、これだけ子宮が膨らんでしまいました。もしお腹の中で破裂していたら、大変なことです。

病気について

猫白血病ウイルスと猫免疫不全ウイルス

今回は猫白血病ウイルス感染症(FeLV)と猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)についてお話します。

◆猫白血病ウイルス感染症(FeLV)は感染しているネコちゃんとの密接な接触によってうつります。感染の危険度は年齢や生活様式によって異なりますが、感染猫との同居、あるいは外でのケンカで感染します。

FeLVに感染すると、はじめは一見健康そうに見えますが、次第に元気がなくなってきます。免疫力が低下するので口内炎、胃腸炎、鼻炎などがなかなか治らず、またリンパ腫や白血病など致命的な病気を伴い最後は亡くなってしまいます。

◆猫免疫不全ウイルス感染症はエイズ症状と似ているために猫エイズとも呼ばれています。感染しているネコちゃんとのケンカで噛まれたりすることでうつる事が多いです。

FIVに感染するとこちらもはじめは元気そうに見えますが、次第に元気が無くなっていきます。免疫力が低下するのであらゆる感染症に抵抗できなくなり、口内炎、胃腸炎、鼻炎などがなかなか治らず、感染末期には人間のエイズのような症状が現れ、最後には亡くなってしまいます。

◆治療

FeLVとFIVともに現時点で有効な治療法がなく、感染したことがわかった場合には発症をおくらせる管理や症状に応じた治療をしていくことになります。

◆予防

FeLVには以前からワクチンがありました。FIVに関しても日本でのワクチン接種が8月から可能になりました。

ともに一度感染し発症すると、治すことができない病気です。お外に出る子で予防を受けている子が多くなれば、感染するネコちゃんの数が減っていきます。お外に出ている子やすでに感染している子と同居している子を守るためには是非予防を考えてください。

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おもちゃの誤食

今回はおもちゃが消化管内異物になることもあるということについてお話します。

普段なにげなく遊んでいるおもちゃを飲み込んでしまい、大事になる(開腹手術)ことが時々あります。

『ワンちゃんの体に比較しておもちゃが小さすぎた』

『ぬいぐるみがほつれていたけどそのままにしていたため中の綿や布地を飲み込んでしまった』

『スーパーボールを投げたらそのまま飲み込んだ』などがあります。

これらは事前に気づいてあげられそうな問題ですよね。

あとはおとうさんの靴下やお母さんのストッキングなども異物になりますし、おいしいものが入っていたビニール袋や焼き鳥の竹串など匂いが良いものも怖いですね(´□`。)。

腸管内に詰まりますと命にかかわります。

今一度おもちゃの点検をしてあげてください。

病気について

歯周病をふせぐ

うちの手鞠の歯がすべて永久歯に生え変わりました。ただいま4ヵ月半ぐらいですので、早めに生え変わったと思います。歯がかゆくて、いろんなものをガリガリ怪獣みたいに破壊するのも落ち着いてくれると助かります。

犬の歯の数は乳歯が28本、永久歯が42本です。これからはこの永久歯を大事にしていかなければなりません。手鞠は乳歯のときから歯磨きをするまねをしていました。犬用の歯磨き粉が大好きなので歯磨きというより舐めたい舐めたいで大変です。これからもたまに忘れるでしょうが、基本は毎日していきたいと思います。

乳歯が残っていたり、歯磨きをしていなければ必ず歯周病にかかります。まだ小さい子は早めに習慣づけていきましょう。もうすでに大きくなって歯磨きをしていない子は少しづつでもいいのでやってみませんか。ご相談にのりますので診せに来てください。

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ネコの尿路疾患

最近ネコちゃんのおしっこに関する病気で入院する子が多いので、今回は猫下部尿路疾患(FLUTD)の一部についておはなしします。

この猫下部尿路疾患(FLUTD)とは膀胱から尿道におこる、いろいろな原因と症状を含む病気の総称です。今日退院したネコちゃんは初診時ペニスの先に栓子(結晶など)がつまりおしっこが24時間以上出ていなくて膀胱がパンパンになっていました。その結果、腎臓に負担がかかりすぎて急性腎不全になっていました。

さいわい、この子も先週の子も処置と治療に反応があり元気になり退院できました。先日ネコの結石症で載せた子は石が原因ですが、今回は石の手前の結晶が原因でした。

どうして結晶がつまるのか?

これは男の子のペニスの先端の尿道は細くなっています。さらにネコちゃんは砂漠の出身なので水分を大切にするからだの構造になっています。ですからおしっこを濃くします。濃い尿は膀胱の中で結晶を作りやすくなり、そして結晶ができた場合は尿道に詰まりやすいのです。

どうやったら予防できるのか?

まず食事です。これは個人差があるのですが、同じ食事を食べていても大丈夫な子もいれば、結晶ができて詰まる子もいます。できやすい子は尿路疾患用処方食などを食べることでリスクを減らします。次はなるべくお水を飲んでもらい、水分摂取量を増やす工夫です。蛇口から流れる水が好きな子もいれば、お風呂場の水が好きな子もいると思います。そして清潔なトイレをネコちゃんのお気に入りの場所に2箇所は作ってください。あまりおしっこをためこまない事で結晶もできにくいです。

どんな様子がサインなのか?

・おしっこの色が赤くないか。

・トイレの時間が長くないか。

・ペニスをよくなめていないか。

・いきんでいるが尿は出ているか。(便秘と間違われることが多いです。獣医師が触診すればすぐわかります。)

・おしっこするときに叫び声など奇声をあげる。

・トイレ以外の場所でおしっこをするようになった。

・落ち着きがなくなった。

・食欲が無く、もどしている。(これはかなり状態が悪化した様子です。至急処置が必要です。)

あまりにおしっこを出せていない時間が長いと命にかかわります。普段から様子を見てあげて、変化に気づいてあげてください。上に書いたことが気になるかたはおしっこ検査をしましょう。食事についてもアドバイスいたします。

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